2011年3月5日土曜日

きかんしゃトーマス

 息子がトーマスを好きになったのはいつからだろう。気が付くと、家中トーマスだらけである。トーマス大全集2冊、トーマスプラレール、トーマスラーニングカーブ、トーマスボール、トーマスかるた、トーマスパズル・・・。そこらじゅう、あの気色の悪い顔の機関車でいっぱいである。豊齢線だなんて、大人でも知らない言葉を巧みに使いこなし、祖母を笑わせている。それにしても、なぜあの気色の悪い顔が付いた機関車が好きになれるのか? 大人の私には全く理解できないが、息子が好きとあれば、こちらも自ずとキャラクターを憶えていく。
 そもそも男は、動いて、音を出すものが大好きである。私も童心に帰り、いつの間にか詳しくなっていた。機関車のほかに、ディーゼル機関車がいる。貨車たち、機関車以外の働く車、などなど。どれもご多分に漏れず、気色の悪い顔はついているのだが。
 息子が一定のキャラクターものにはまっていくことに、少なからず抵抗は感じるものの、好きなればせめて教育的な価値を与えたいと思うのは、何も私だけのことではないであろう。トーマスは、イギリス出身である。英語である。そう、英語である。英語教育に猛進している私としては、もってこいの教材である。何を隠そう、私は英語を職業にしているので、息子にも当然英語を使いこなせるようになってもらいたい!と強く願っている。トーマスはもってこいの教材ではないか! トーマスのDVDを英語で見せれば、英語に慣れ親しみ、英語耳を育て、英語が好きになり、英語を必要と感じ、自然と英語ペラペ~ラになるに違いない、いや、なるに決まっている! そう確信して、私は狂ったようにTSUTAYAに通い、トーマスのDVDを借りまくって息子に見せることにした。いわずもがな、当然音声は。え・い・ご!!! とにかく英語じゃい!!! 聴いてりゃ、自然に英語脳になるになるんじゃい!!! 私は、なんて素晴らしい教育パパなのだ!!! 
 自分に陶酔しながら得意げに、音声を副音声にした。そのときである。2歳の残酷な言葉が私の純真な心を引き裂いた。
「えいご、いや。」
え、今、何て言いました?
えいご、いやって、聞こえましたけど。私の耳がおかしいのかしら。今、「えいご、いや」って聞こえたのは、きっと、何かの間違いでしょう。
そんなことを、わずか一秒間の間に自問自答した。呆然としている私の膝の上で、息子は、
「にほんごがいい。」
なんだ、こいつ。狂ってしまったのか?わけのわからんことを口走っとるぞ。。
私は、認めたくなかった。認めるわけにはいかなかった。だって、英語教育を崇拝している私の息子が、こともあろうに、2歳にして、「え・い・ご・ぎ・ら・い」になるなんて~~~~~~~~~~。
オゥ ノーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現実を認められない私はうろたえながら、
「トッ、トーマスは英語しかしゃべらないんだよ」となんとか言葉にした。
すかさず2歳児は、
「この前、にほんご、しゃべってたじゃん。」
何言ってんだ、こいつ。頭をハンマーで殴られた、そんなショックを受けてしまった。
こやつ、2歳児のくせに、日本語と英語の認識ができ、しかも、いっちょまえに反抗しているではないか。2歳児に負けた…。大の大人が2歳児に・・・。悔しい。悔しすぎる・・・。
そんな敗北感を感じつつも、息子の成長に思わず、微笑んでしまう俺がいる・・・。
だが俺にも意地があるってもんがる。
 息子よ、トーマスはもう、英語しか、しゃべらんぜ。 

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